青空に
花びらを
散らすよ


君が、空へと帰りました。
僕を置いて、遠い場所へと逝きました。

先立たれた日に見上げた空は綺麗な蒼で。
まるで君が僕に笑いかけてくれているようで。

あの日僕は泣いていました。
僕の心だけが、ひとり、泣いていました。



「今日も良い天気だね、曽良」



一人残った墓地に僕の声だけが響きます。
君が本当は此処に居ないことは分かっています。



「でも、此処からじゃ、そらは遠いから」



だから、僕は此処から君に贈ろうと思います。
君には僕が見えていますか、僕のこの声が届いてますか。



「あのね。僕は、君が思ってる程強くないんだ」



静かに触れた墓標の冷たさは、君の手のひらを思い出させました。



「本当はひとりじゃ立てないくらい弱くて、」



薄紅の桜が舞う優しい風は、君の微笑みを思い出させました。



「今だって泣きたいくらいに苦しくて、」



遙か彼方果てなく続く青空は、君の眸を思い出させました。



「辛くて、哀しくて、寂しく、て…っ」



君が居なくなって一緒に失くしてしまったと思っていた涙は、
流れる雫を拭ってくれた温もりを、思い出させました。



「君が、誰よりも、大切 で 」



僕を置いて思い出に変わってしまった君は、とても愛おしくて。
こんなにも僕は君のことを愛していたんだと思い知らされて。



「曽良、曽良、そ、ら、そら…っ!」



泣いて、蹲って、叫んで、また哭いて。
そして吹き抜けた風は、やっぱり君のように優しい風で。



「……そ、ら…?」



嗚呼、届いているの?
僕の声は、君に、届いているんだよね?



「………っ、ふ…」



止めどなく溢れるこの涙は、君への愛の証。
君を想う、僕からの伝えきれなかった愛の証。


だから拭わずに、君への言葉と一緒にそらへと贈りましょう。



「愛してる、ずっと、ねぇ、君だけを」



伸ばした手は、そらに届かないけど。



「だから、また、いつか」



この声と想いだけは、届くと信じてるから。




「 さ よ な ら 」




それはある晴れた日の、桜舞う蒼い青い空の、下。





青空に





花びらを





散らす よ



( 最果て旅立つ、そらへ贈る愛の言葉 )



09.01.10